よどみの置き場

怪談……とは限らないこわい話の置き場です。

【人間の…】チェーンメールと宛先と

チェーンメール
それは一方的に文章を送り付け、次の人に回すようにと念押しする文章である
悪意の有無にかかわらず、ほぼ内容の根拠がなく、大抵送られてきたことに厄介がられる代物である(電子文章の場合には「代物」というのもおかしな表現ではあるが)
今回は私にチェーンメールが届いた時の話である


私が中学生の時、時期は1990年代初頭となる。
ある日私宛てに、切手の料金不足の通知が貼られた封書が届いた。消印はここから50km離れた街の名前である。封筒を裏表見ても差出人名はなく、透かして見ると、便箋ではなく"紙片"とおぼしき物が入っているようだ
この時点で「いやな予感」がした。『不幸の手紙』というやつであろう。この頃のチェーンメールと言えば、「~名に同じ内容の手紙を出さないと(あなたは)不幸になる」と文言で締めくくられる『不幸の手紙』と呼ばれるもの一択であった
この時点で「不足料金を払わずに支払いを拒む(そして返送される)」*1ことは出来るが、どんな文章かは興味があった。あえて料金不測の通知のはがきに不足料金分の切手を貼りつけ投函し、しょうもないとは思いつつ興味本位で封書を開けた
内容は典型的、今風に言うとテンプレどおり、であった。手書きで"5人に回せ。出さなかった人はその後死んでいる"的な内容だったように記憶している。・・・・今こうやって打ち込んで気が付くが、随分カジュアルに「死ぬ」という単語が出てくる。「手紙を出さないだけで『死ぬ』とはひどい内容だ」と思う程度には私は大人になったようだ。もちろん「ただの『不幸の手紙』が来たよー」と母に告げて即座に捨ててその場は終わった

この頃、私は通信販売の文通欄で文通相手を募っていたので、そこから漏れたのだろうと疑っていなかった。こういう文通欄から『不幸の手紙』が届く、ということは珍しいことではなかった
翌日学校に行くと、同じクラスの女子生徒が「うちに『不幸の手紙』が届いた」という話をしていた。どうも周りの話を耳を傾けて聞いていると、このクラスの女子生徒全員に届いていたらしい。そうなると中学校の生徒のだれか、もっと言うと、クラスのだれかということになってしまう。わざわざ50kmも離れた町まで行き、何十人分の封書をしたためて送り付けるとはずいぶんな手間である。その行動に心底呆れた。手紙を書かなかった私は2024年現在も生存しているので、手紙の脅し文句に意味はないのは言うまでもない

2024年になってふとこの『不幸の手紙』の話を思い出した
あの当時は送り主は「同じ中学の誰か、もっと言うと自分のクラスの誰か」と疑っていなかった。今になってふと、クラスの名簿が何らかの理由で横流しされて、全く知らない相手から送り付けられた可能性があることに気が付いた。塾や部活動で他校の生徒と知り合う人は多く、その際に色々な情報が出回っていることは、うっかり耳に入ってくることがあった。今思うとあの当時は個人情報という概念がない時代だった
自分の知っている相手から嫌な手紙を送られてくるのか。自分が知らない相手から嫌な手紙が送られてくるのか。どちらがより気分が悪いのだろうか

チェーンメールは受け取っても心によどみが下りる、出しても心によどみが下りるもの
心によどみが下りるならまだしも、内容次第ではいたずらに周囲を混乱させたり、逮捕されることだってある*2
チェーンメールは送らないに越したことはない

*1:2024年(令和6年)現在でも、そういう対応は可能である 手紙の豆知識 手紙にまつわるQ&A - 日本郵便

*2:チェーンメール 逮捕」で検索してみよう