よどみの置き場

怪談……とは限らないこわい話の置き場です。

【人間の…】思い込まれた家

ある喫茶店で、そこの常連客のお一人からこんな話を聞いた
当時の私は20代後半。その数年前まで廃墟探索に連れて行ってもらっていた。その時期でも廃墟の写真集を購入していたし見るのは好きであった。その話になった時に出てきた話である

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(話を聞いた時より)数年前、一時「廃墟ブーム」「心霊スポットブーム」が起こった
インターネットの黎明期は当の昔に過ぎていたものの、まだ「インターネット」という言葉にサブカル色やアングラ色を感じる時期であった
掲載される廃墟も大型のホテルや鉱山跡だけではなく一般の空き家も珍しくなかった。それだけならまだしも、ご丁寧に住所なり行先まで書いているという通報待ったなしな掲載をしているものもあった
行く間での敷居の低さ?もあったのか、行ってきた情報を見て若者が友人を誘ってスポットへ行ったら、警察沙汰となるケースもあった
この話を聞いた頃はそのような背景があった


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おそらくはこの話の主もそういう廃墟突入サイトを見たのだろうか
そう遠くない場所に長年人が住んである様子のない家があることに気が付いた
主役はある日、友人2人を誘って車でその家に行った

家の周りは管理されている気配は薄かった。鍵がかかっていないことを確認し玄関から入る
室内は荒れている雰囲気ではなかった
主役も友人たちも拍子抜けしてその家を後にした

車に乗って帰路に就く途中であった、後ろからサイレンを鳴らしてパトカーがやって来る
パトカーより路肩に止まるよう指示される
3人が止まったところ警官が周りを囲む
訳が分からない3人。警官の口から想定外の言葉が出た
「建造物侵入の容疑で交番に同行願います」

彼らが空き家だと思っていた家は、住人がいるれっきとした現役の民家であった
玄関の鍵がかかっていなかったのは住人がたまたま外出していたからであった。田舎での高齢者の一人暮らし、施錠の習慣はないのである
玄関の周りが管理されている雰囲気が薄かったのは、住人が高齢で周囲の整備まで手が回らなくなったからであろう
おまけに友人の1人が家から灰皿を失敬していたため窃盗も罪状に追加された

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このような案件は報道もさらりとしたものであった
あるテーマパーク跡地は、あまりにも不法侵入が多いため警察が腹に据えかねたのか、成人の不法侵入者を住所入りで実名報道した
このように警察が厳しく対処したからか、徐々にこの時の「廃墟ブーム」「心霊スポットブーム」は収束した