【人間の…】奇異な喫茶店
私が幼少の頃の話である
家の近くにあるビルの1階のテナントは喫茶店であった
この喫茶店、奇異なことに人が出入りしている様子があまり見受けられないのだ
それどころか日中でも「準備中」だったりする。喫茶店が日中営業しないことは当時あり得なかった*1
ある日、たまたま「営業中」となっていたので、母と私で入ってみた
- 採光が良くないビルにもかかわらず、なぜか照明がついていない
- 入ったら奥に人がいる。にもかかわらず注文した品物はない。水が入ったコップもない*2
- 客はついていない照明側に固まっている。しかも4人掛けのテーブルに6人座っている
いや、それよりなによりもっと奇妙だったのは
- ウェートレスが客である我々を睨みつけている
いくらこちらが未就学児連れ(私のことだ)で、あまり喫茶店としては歓迎できないとはいえ、客を睨みつけるとは穏やかではない
母はコーヒーを、私はオレンジジュースを飲んでさっさと帰った
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この喫茶店に以後我々は寄ることはなかったが、営業は続けていた
相変わらず人の出入りがあるようには見られなかったが
***
それから5年後、この奇異な喫茶店の事情を知ることになる
ある日の新聞に10行程度の記事があった
賭博開帳の罪で喫茶店が検挙されたという
その喫茶店の住所、名前はばっちり出ていた。・・・・例の奇異な喫茶店だ
なんとあの人の出入りがない喫茶店は賭博喫茶だったのだ!
それであればあの喫茶店の不自然さも納得である
- 採光が良くないビルでありながら、照明をつけないのは、丁度賭博の最中だったからだ
- 賭博行為を行っているのであれば、暗い席に着き、テーブルに定員以上の人がいるのも納得である
- ウェートレスが我々を睨んだのは、賭博行為に気が付かないうちに帰ってほしかったのだろう
・・・・うん、全くもって行動に矛盾がない
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当然であるが奇異な喫茶店は閉鎖命令が出され、1年後くらいに内装も看板もなくなった
おそらく裁判が終わるまでは証拠保全のため、すぐに撤去できなかったのだろう
今でも奇異な喫茶店が入居していたビルはあるが、どうにもテナントの入れ替わりは激しい気がする