よどみの置き場

怪談……とは限らないこわい話の置き場です。

【こわい話】春の日、私は抗う

父方の祖父がこの世を去ったのは正月3が日だった

葬儀も供養も仏式で執り行うこととしたので、四十九日に墓に納骨を行う……とはいかなかった
いかんせんここは北国。墓は屋外。四十九日の頃は雪が1mくらい積もっている・・・・
その為、春分の日に納骨を行いたいことをお世話になっているお坊さんに伝えたのだった


父は念のため、初七日が終わった後に墓を見に行った
雪もほとんど積もっておらず、納骨室の扉も無事に開いた
「まあ、納骨は春分の日だしこのままいけば大丈夫だろう」
父は笑いながら報告していたものの・・・・
墓を建てたときのこともあるしなあ
(参考:【こわい話】墓を建立したときの話 - よどみの置き場
と私は漠然と嫌な予感がしていた

春分の日がやってきた
自宅を出るときには太陽が顔を出しており、風も強くはなく、屋外に出る分には申し分のない天気だった
身内と、お坊さんがそれぞれ車に乗り墓地についた

「おもったより雪があるなあ」
この年は積雪量は多くなかったが、寒い日が続いていたので雪解けが進んでいなかったのだ
こんなこともあろうかと雪かき道具は積んでいたのでなんとか除雪はできた

雪かき終了後、お坊さんの読経が始まった
読経が始まったとたん・・・・
風が強く吹きだした
雲が勢いよく西から流れてきた
小粒ではあるが雪も降ってきた
読経が終わるころにはちょっとした吹雪の状態となった

お坊さんの読経が終わったので、父が納骨室の扉を開けようとした
父、腰を落として扉を引っ張る
「あれ、重いぞ、開かないぞ」
「親父、入りたくないんでないのか」
父、顔をゆがめながらも扉を開けた
吹雪の中祖父の骨箱を納骨室に収め、扉を閉めて無事納骨終了
納骨を終えたとたん、雪はやんだ

「親父、よっぽど墓に入りたくないんだなあ」
帰りの車内で父はそう呟いた
そのころには風も止み雲も東のほうへ去っていった

***

天候のことはさておき、納骨室の扉が開かなかったことは課題となった
父も祖父の介護や葬儀で疲れていた、ということもあるだろうが、加齢とともに筋力が落ちたのだという結論になった
そこで、納骨室の扉を一枚岩で塞ぐ方式から、観音開きで開く方式に作り替えた。扉には普段鍵をかけておくこととした
あわせて経年に伴い不具合が出てきたところも改装した
その時の改装は、不具合もなく現在も問題はない

***

このお墓にまつわるほかのエピソードは下記にもあります

kogetya.hatenablog.com
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