よどみの置き場

怪談……とは限らないこわい話の置き場です。

【人間の…】無断使用

私が「その写真」を見つけたのは、祖父が墓を建ててから5年ほど経った頃だろうか。
その墓の写真がY石材店の広告に無断使用されていたのである。


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ことの起こりは墓を建てた翌年、春のお彼岸にさかのぼる。
祖父母、両親、私は「初めてのお彼岸だから」と公営墓地へお墓参りへ行った。
ゴールデンウィークまでは雪が降る土地。春のお彼岸に雪が積もっているのは珍しくない話である。
そのため車のトランクに雪かき用剣先スコップも入れてあった。

案の定墓には20cm程の雪が積もっていた。
この時は周囲の区画で建設済みなのは右隣と向いだけ。なんとか父と祖父で雪掻き。右隣さんに迷惑をかけることもなく30分ほどで雪掻き終了。
無事お墓に参ることはできたものの、「よほどがない限りは春のお彼岸は来ない」と家族全員で取り決めたのであった。

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それから5年ほど経った頃だろうか。
何気なく地元新聞のテレビ欄の下にあるY石材店のモノクロ広告を見ると……うちの墓じゃないか!
両親に確認を取ったところ間違いはないだろうという結論。
さらに、積雪時の写真であることにより、一回だけ行った春のお彼岸の後の写真であることも判明。
よーーーーく目を凝らしてみるとうちの墓の施工をした「X石材店」のプレートも映っている。

Y石材店がなぜX石材店施工であるうちの墓の写真を、広告として利用したか

  • そもそも積雪時の墓の写真がほしかったが、除雪していた墓そのものが少なかった
  • 写真を撮る際に、他家の墓が移りこまないアングルを満たす墓がたまたま家の墓だった
  • 周囲も似たデザインであったため、Y石材店も細かいことは気にしていなかった

あたりが要因と思われるが、Y石材店に連絡は取っていないので不明である。
我が家はこの件について、Y石材店に連絡を取らなかったし、X石材店に報告もしなかった。
5年も寝かせたのだから、Y石材店もX石材店施工の件は知っていて広告にしたのだろう。そう考えることとした

この広告はその後5年くらい使用され、見つけるたびに我々一家に複雑な感情を喚起させていたのであった。

※余談:墓を建てたときのエピソード
kogetya.hatenablog.com