よどみの置き場

怪談……とは限らないこわい話の置き場です。

【こわい話】向かいの部屋

当初はmixiに書いた話であるが、転載に伴いほんの一部変更しております。

  

当方がその病院に2泊3日したのは、親知らずを全身麻酔ですべて抜歯するためだった。

手術に関してもいろいろ、こわい話があったがそれはいずれ。

口腔外科の部屋はナースセンターから一番離れた日当たりの良い4人部屋。時期を外しているため、入院するのは当方1人である。
向かいの部屋は2人部屋であるが、戸がしまってあり使われている様子はない。

手術が終わり、夜になった。
当方の入院した病棟は、口腔外科以外には緊急性の高い手術を受けた(あるいは受ける)人たちの集中する病棟であり、頻繁なナースコールと巡回があった。
当方は点滴の入れ替えのため巡回があると予告され、そのうえ顔面の血管とリンパ管が活発に動いている感覚がどうにも心地良くなく、なかなか寝付かれなかった。

そんなときナースコールが近くで鳴った。

となりが脳外科の病室なので介助が必要になったのだろう。
冴えているような冴えていないような頭で考えていたら、看護師さんはこっちまでやってきた。
しかし当方の部屋へは入らず、なぜか向かいの病室へ。
戸を開け、ナースコールが止まり、出てきて、戸を閉めた。

その病院、1人でも入院している部屋があるなら戸は全開にしてある。
そのため、1人なのをいいことにベッドカーテンを閉めなかった当方から、顛末の一部始終が見えてしまうのだ。

つまり、向かいの病室はこの時点で1人もいないのである。

一応、当方の部屋の横、建物の端側にトイレがある。
そこを利用する人がいたずらすることも考えられる。
しかし当方の横の部屋は、ナースセンター側横にトイレがあるので、わざわざ部屋の前を通る建物の端側のトイレは使わない。
そもそもそういう事をしているなら、当方が事前に戸をあける音を聞いていてもいいはずだ。

そうでなかったら、機械そのものの故障を疑う。
それも違っているなら、つまり、そういうことだ。

翌日、ナースセンターの近くの2人部屋で点滴を打たれている人がいた。
入院の札はないので、入院の人ではないようだ。
部屋の戸は全開になっていた。