よどみの置き場

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【こわい話】北寮15号室の怪

この話は中学の時の体育の先生の話である。
その先生はすでに他界されており、舞台となった建物も現存はしていない。が、一応場所は伏せさせておく。

 

先生は自宅から列車で少々遠方の大学に通っていた。
その大学には南寮、中寮、そして北寮の3棟の男子寮があった。
各寮は玄関から1~15号室まで部屋があり、それぞれの部屋は10人定員だった。
ただし北寮の15号室だけは募集がなかった。この部屋では以前学生が室内で自殺しており、大学側が当該の部屋を完全封鎖したためである。また、完全封鎖以前から幽霊騒動が絶えなかった、という噂もあった。
この話は学内では有名だったようで、北寮は15号室に近づくにつれ定員割れになっていた。

先生は3年生の春、授業の関係で寮生活をすることに決めた。
既に入学シーズンが過ぎているため、寮に空きがあることは期待していなかった。
だめでもともとと思いつつ大学の事務に入寮希望の旨を伝えたところ、「北寮の14号室が空いているよ」との返事。
素直にラッキーだと思ったという先生は、そのときまだ北寮の15号室の話は知らなかったという。

先生が入室した北寮の14号室には既に1年生が3人いた。
寮の1部屋は定員10名と聞いていた先生は、自分を含めて4名しかいないこと、1年生しかいないことに引っ掛かりは感じていた。
とはいえそこは寮生活。先住の後輩は新入りの先輩をうまく立てて意外と順調な生活だったという。

 

夏休みに入っても北寮14号室の面々は誰1人寮を離れることはなかった。
そして8月のお盆がやって来た。

この大学の寮の近くに墓地があった。
お盆、ということはお参りに来る人がいる。この時代はお供え物の花やお菓子は持ち帰りしないものだった。そのお供え物はどうなるか、というと、大学の寮生が夜遅くになると自主的に無断で回収し、各自の胃袋に収めてしまうというわけである。
北寮14号室の面々も当然と言わんばかりに墓地に行くこととした。

 

他の部屋の面々が室内に入ったことを確認し、3年生の先生を先頭に、他の3人の同部屋の後輩も袋を持ってドアを開けた。
ふと15号室の方を見るとドアが開いていた。
「珍しいこともあるものだな」先生はそうは思ったものの墓地へ向かっていった。

墓地にはそこそこお供え物があり、北寮14号室の面々も無事(?)回収をした。
帰りしなに、ある後輩が思い出したように先生に話しかけた。
「先輩、うちの寮の15号室って、幽霊が出るって有名な話があるんですね。この間別の先輩から聞きました。」
先生にとっては初耳だった。そして、14号室の定員が埋まらない理由、1年生しかいない理由を察してしまった。

寮に戻ると15号室のドアはまだ開いていた。
15号室が気になった先生は、ちょっと見てくると同室の面々に言い残し、15号室に向かった。
15号室のドアの隙間から部屋をのぞくと、白い「何か」が見えた。
それは一瞬にして消え、星の光も入らない暗闇だけがあった。

 

北寮の15号室で、かつて学生の自殺があったこと。そののち、窓に板を打ち付けて侵入できないようにしたうえで、ドアを固定して完全封鎖状態にしていること。
先生がそれらの事情を知ったのは、もう少しのちの話であったという。
その後は寮生活に関して、これといった奇妙なことはなかったと先生はいう。

 

4年生になった先生は寮生活を継続することにした。
ただし北寮の14号室はやめてくれと大学の事務に頼んだという。それは同室だった3人の2年生も同様であった。
4人とも無事別の部屋に移ったという。

 

↓おまけの話もあります↓

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