よどみの置き場

怪談……とは限らないこわい話の置き場です。

【人間の…】おみくじ その1

これは母から聞いた話であるが、自分の父方祖母と父方の伯母にまつわる話である。

伯父(父の兄)が女性を連れて、めったに帰らない、父方祖父母の家にやって来た時の話である。
この時連れてきた女性と結婚したいと伯父は祖父母に告げた。紆余曲折はあったが、この女性はのちに私の伯母となる。
その時、父方の祖母がその女性(のちの伯母)に対して「近くの神社に行こう」と誘ったのだった。

近くの神社といっても、歩けば30分、車では10分くらい。道中この2人がどういう会話をしていたかは知らない。
ただ、2人とも神社にお参りをして、2人ともくじを引いたのは事実だったようだ。
その時、2人とも同じくじを引いた。
内容は「凶」だった。

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母はこの話を伯母から聞いたと、私に話してくれた。
「凶を引いたとき時からあの二人の間柄は決まっていたんだろうね」とも言った。
事実、父方祖母とその伯母は私の目から見ても明らかに反りが合わなかった。
もっともそれ以上に、父方祖父母と伯父はよそよそしい関係だったのだが……

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個人的に引っかかるのは、なぜ、あの2人は初対面で神社に行き、くじを引いてきたのだろう?という事実である。
伯母は神社仏閣にお参りするのを好まない人である。ましてくじを引くことはめったにないうえ、その内容は一切気にしない人である。
父方祖母は、伯母に比べるとまだその手の行為はする方ではある。とはいえ元々は尼さんを祖母に持つ人、*1神社は祖父が氏子であるから行く。という程度の人である。
つまり互いに好きでもないことをわざわざ行っているのである。
もっというと、2人が行った神社は、地元の人間でもめったに「凶」が出ないと言われている……

*1:父方祖母の祖母は若い頃は尼さんだったのだが、明治維新の混乱で還俗したらしい……