よどみの置き場

怪談……とは限らないこわい話の置き場です。

【こわい話】夢は招く

当方の実家は、当方が赤ん坊の頃に新築している。
この家を建てる際のいきさつも色々あるのだが、それはいずれ。

 

建物が完成したとき、母方の祖母が父方の祖父母への挨拶がてらやって来た。
結婚してからこの家が立つまで、父方の祖父母の家 兼 父の仕事場 で生活していたからである。
足を運んでもらったついでに、両親は出来たての家に母方の祖母を案内したのだった。

2階の一室に足を踏み入れた際、母方の祖母はこう歓声を上げた。
「まあ、この部屋この間夢に出てきたわ。ゆう子ちゃん(仮名)と一緒にね、この部屋の窓から外を眺めたのよお~」
母は恐る恐る、それはいつの話か、と尋ねた。
「1週間は立っていないわねえ~」
母方の祖母はあまり気にするふうでもなく答えたという。

母はこれを聞いて嫌な予感がしたという。
ゆう子ちゃん(仮名)というのは、その2年前に急死した母方の祖母の妹、
すなわち母の叔母の名前だったからだ。

当方の実家が建って2年ほどして、母方の祖母は病に倒れた。
それから1年ほどで、妹のゆう子さんの行った場所へと旅立った。
偶然なのか、姉妹揃って死因は末期の肺がんだった。

母は今でも、「母さん(母方の祖母)は、あの時にもう運命が決まっていた」と疑っていない。
父に言わせると、その部屋は棟上げの時に御札を取り付けた柱に一番近いのだという。
「ま、そんなこともあるだろう」程度には考えているようだ

現在その部屋の主は、新築時には赤ん坊であった当方である。
当方がうちの家族では一番、不思議な話を見聞きしているのは、単なる偶然だと思っている。